Decom Insight School

“n=1”分析を武器に新たな市場創造をし続けるNo.1ブランドの「消費者理解」

旭化成ホームプロダクツ様

企業スローガン「まいにちを、たいせつに。」の実現に向け、家庭用日用品関連商品の開発・販売を行う旭化成ホームプロダクツ株式会社様。おいしい料理をつくりたい、清潔な暮らしを守りたい、といった料理に関わるすべての方々の幸せと健康を願い、「サランラップⓇ」「ジップロックⓇ」「クックパーⓇ」「フロッシュⓇ」「ズビズバⓇ」等の商品を提供しています。

商品開発や店頭販促を担うマーケティング部の皆様にデコムの人材育成研修「インサイトスクール」を受講いただきました。

今回は受講者を代表して主力商品のブランドマネージャーを務める高橋弘樹さん(サランラップ担当)と副島孝仁さん(ジップロック担当)にお話を伺いました。(取材:デコム山坂・文責:土井)

商品開発から店頭販促まで、ブランドを一気通貫して担うマーケティング部

―――マーケティング部の皆様の普段の業務について教えてください。

高橋:各ブランド単位でブランド価値・シェア向上に取り組んでいます。商品設計からSNS施策、店頭販促チームと販促物の作成までを、各ブランドチームが一貫して行っています。サランラップ、ジップロック、クックパーの3商品に関してはNo.1シェアをいただいているので、市場全体を拡大するための需要創造施策にも注力しています。また、サステナブルアクションの推進など、ブランドや事業価値の向上につながる成長領域への取り組みや、ブランドの中期戦略立案も担っています。

―――商品設計から販促まで、幅広い業務を担っているのですね。高橋様・副島様の普段の業務について教えてください。

高橋:サランラップブランド全体の戦略立案、広告宣伝の全体戦略立案を行っています。今注力しているのは、需要創造施策「サラン&ジップで!冷凍貯金」です。冷凍保存の需要拡大のために、お客様の冷凍保存への意識をポジティブに変換いただけるような広告宣伝と店頭施策を連携して展開しています。シェア拡大施策としては、マス広告・SNS施策の他、防災用途訴求も実施しています。

副島:ジップロックは、消費者に寄り添って成長していくブランドでありたいという思いがあります。食品保存の用途として、ジッパー部の機能のアップデートの他、食品保存以外の用途の拡大を図っています。消費者のアイデアで様々な使い方をしていただき、将来はライフスタイルブランドになっていきたいと考えています。また、消費者がサステナビリティに関して意識するきっかけになってもらえたらと、使い終わったジップロックを回収して、ビニール傘やゴミ拾いトングにリサイクルする「ジップロックリサイクルプログラム」も推進しています。

―――私も薄くて軽くて丈夫なので、趣味の登山でジップロックを愛用しています。消費者n=1の思いがけない使い方から、新しいジップロックの価値を発見できそうですね。

不満探しではなく、価値を探して不満を紐解くことが、商品改善の近道だと気付いた

―――前半は座学中心、後半はワーク中心で構成された3時間のプログラムをご受講いただきました。前半の座学部分のご感想を教えてください。

高橋:インサイトが大事だ、ということは、日頃のマーケティング活動の中で漠然と感じていましたが、講義の冒頭で、なぜインサイトが大事なのかを背景から説明してもらえて、改めて腹落ちしました。具体的にインサイトをどう見つけるのか、良いインサイトを見つける目的である「良いアイデア」とは何か、についても、言語化していただき理解が深まりました。消費者の心理にここまで特化した研修ははじめてで新鮮でした。インサイトを体系的に学べた点も他社とは異なり良かったです。

副島:これまでは、消費者の「不満」から商品改善案を見つけることが多かったのですが、不満スタートではなく、消費者の「価値」、嬉しい瞬間からスタートするというのは、発想の転換でした。

n=1を複数人で洞察することで、新しい切り口を増やしていける

―――後半のワークを実施されたご感想や、全体を通じて印象に残っていることを教えてください。

副島:グループ内でそれぞれの考えを共有したのですが、同じn=1事象について、それぞれが異なる捉え方をしていました。思考トレーニングを継続すれば、メンバーの捉え方が揃うようになるという類のものではなく、違う切り口がどんどん増えていく、ということだと感じました。多様な切り口で、可能性を広げられるようになると期待が持てました。

―――n=1を起点としたインサイト洞察は正解が1つに決まっているわけでは無いので、まずはいろいろな視点から消費者を見て筋の良い仮説を出していくことが大事です。また、人間を見ることを楽しもう、といった雰囲気づくりを組織の中で醸成していくことも大事な観点ですよね。

副島:n=1事象を洞察していくことは、これまでもチームで訓練してきました。n=1事象を広告宣伝で使えそうだなという視点で活用していましたが、新しい商品にもつなげていけるという感覚を得られるようになりました。引き続き、チームで訓練を積んでいけたらと思います。

全体傾向ではなく、n=1を見る大切さ。調査結果を読み解く視点が変化。

高橋:ワーク※では、堅い頭を柔らかくして、n=1からインサイトを見つけ出すのは難しかったです。普段、ブランドコンディションを把握するための定量調査と、気になるテーマについて定性調査でグループインタビューを行っているのですが、これまでは、定量調査や定性調査において「傾向」を抽出しがちで、これだけの量があるからこうだよねと結論付けていました。インサイトスクール受講後は、調査結果の背景を洞察するようになり、そもそもこの調査結果をどのくらい参考にすべきなのかと、シビアに捉えられるようになりました。今回実施した定性調査が全てではなく、他のn=1事象もある、という意識も根付いています。チームとして、これまで以上に調査結果を深く読み取れるようになりました。
※ 生活者のn=1事象から価値導出・アイディエーションを行う研修内のワーク

―――いくら良い調査結果が得られたとしても、それを読み解く「人」に知識や引き出しが無いと良い仮説が導き出せないこともあります。分析や着眼の観点をあらかじめ知っておくことはとても大事ですよね。

自分もn=1。自分の消費行動を見つめ直すことで、洞察力を高める。

―――インサイトフル受講後、どのような変化がありましたか?

高橋:n=1から、広告宣伝の施策を考えるようになったことが一番の変化です。以前は「主婦層」ってこういう傾向があるよねという考え方をベースに広告宣伝の施策を組み立てていましたが、n=1を見て、消費行動・普段の生活パターンを想像した上で、マーケ施策を検討することが多くなりました。

―――架空の主婦像ではなく、n=1の、この人の消費行動、このモーメントのこういう瞬間にスポットをあてた施策を検討できるように、意識も行動も変化しつつあるということですね。

高橋:そうですね。自分もn=1なので、普段の自分の購買行動を振り返るようになりました。購買行動を言語化して、ビールを衝動買いした理由を考えるようになりました(笑)

―――なにげない自分の行動を振り返って、何に惹かれたのか、何がトリガーになったのかを1回考えてみるのも面白いですよね。

インサイトから価値施策につなげていけるようになった

副島:深堀った仮説を沢山出した後に、多くの人が共通して持っている感情を探ることが大事だということが理解できたので、そういう見方を心がけるようになりました。モニターの主婦の方に質問しながら、どういうインサイトがあるのか考える癖がつきました。今は仮説リストをつくっています。

―――あくまでもn=1は生活者の変化点やインサイト仮説を得るための手段であって、そこから多くの人々が共感できるような大きなインサイトを捉え、アイデアにつなげていくことが大事ということですよね。本日はありがとうございました。

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