カードローン事業からIT企業への変革期を迎えているアイフル
――――アイフル様について教えて下さい。
森本:アイフルと言いますと、「そこに愛はあるんか」というフレーズのCMなどで知ってくださっている方も多く、カードローンの会社だなというイメージを持たれる方が多いかと思います。一方で国内外には18ほどのグループ会社があり、ペット保険やクレジットカードのライフカードなど多彩な事業を行っております。
2020年の社長交代のタイミングでIT企業になることを目指して取り組んでおります。昔からの会社で堅いイメージをもれる方も多いと思うのですが、エンジニア組織が250名ほどいたり、私服出社やフルフレックス制を導入していたりとカジュアルな雰囲気を持ち合わせた会社に変わりつつあります。
――――グループコミュニケーション部デザイン室の役割についてお聞かせください。
森本:グループコミュニケーション部デザイン室はアイフルのデザイン室ということだけではなく、ペット保険の普及、またライフカードの顧客獲得のための企画立案など、グループ全体に関してブランディングのデザインなどをしております。また、外部のステークホルダーの方とアイフルをつなぐ窓口としても機能しております。
左:アイフル株式会社グループコミュニケーション部デザイン室課長 森本様、右:アイフル株式会社グループコミュニケーション部デザイン室 野川様
これまでの広告大量投下で認知獲得から、お客様の心を捉える必要があった
――――デコムに相談してみようと思った理由について教えてください。
森本:既存事業に紐付いて私たちは成長してきたわけですが、カードローン事業に関してはCMや広告の出稿数の勝負のような側面がありまして、どれだけ想起してもらえるかが勝負となります。一方、グループ会社のペット保険やライフカードなどでは、数の勝負ではなく、いかにお客様の心を捉えるかというところが勝負になってきます。
多くの社員は、これまでのアイフルを母体として数で勝負してきましたので、ユーザーの興味を捉えるのが少し苦手というような傾向にあります。そこで最近のマーケティングの世界で注目されているインサイトを活用していこうと考えました。
――――インサイトスクール導入の決め手を伺わせて下さい。
森本:これまで戦略が乏しい中で、デザインや企画をしても上手くいかない現状がありました。その頃インサイトという言葉を目にしました。インサイトについて詳しく知りたいなと思っていた時に、デコム様の『本当の欲求は、ほとんど無自覚』という本に出会いまして、その本の中でわかりやすく具体的にインサイトの捉えていく手法にピンときまして、インサイトスクールを受講させていただいた次第でございます。
情緒的な価値を構造化、フレームを使うことで理解が深まり他部署との連携を促せることに気づいた
――――インサイトスクール受講後の率直な感想をお聞かせください。
野川:インサイトスクールを受講した当日のメンバーの日報を見てみると、非常に興味を持ってくれたなという実感がありました。デザイン室ではこれまで情緒的価値を考え重要視しようという言葉がよく出ていました。一方で実際には他の部署に起案理由を理解してもらったり、企画を通す際には情緒的な価値を客観的に伝えていく難しさがありました。
そのため、これまではどうしても定量的なデータやトレンドに引っ張られてしまうところがありましたが、今回受講したインサイトスクールを通じて情緒的価値を伝えるためのフレームや構造化を学ぶことができました。他の方に情緒的な価値をはっきりと理解してもらうための手法があることを学ぶことができたのがすごく良かったと思っています。
野川:また実際に、インサイトトレーニングで学んだことを用いて企画を立ち上げてみると周囲からの反応もよく、企画が上手く通ったということもありました。デコム様のトレーニングを行ったことに関して一言でまとめるとなると簡単な言葉になってしまうのですが、ためになったなと思います。
インサイトのベースとなる知識が増えることで、インプットが進み、日常生活の中でインサイトと触れ合う意識が芽生えた
――――インサイトスクールを振り返っていかがでしたでしょうか。
野川:インサイトに関する土台の知識が増えたことで、外部の事例や記事などインプットや理解がしやすくなったと思います。また、日常でも例えばコンビニでカップラーメンを手に取った時、なぜ自分はカップラーメンを手に取ったのだろうかと後から考えてみたり、日々の中でもインサイトのトレーニングをできるようになりました。
インサイトは時間をかけないと学べないものでハードルが高いと思っていたのですが、インサイトスクールを受けたことでインサイトは各個人の中にあるものなので自分の生活の中にもあるんだと思うことができ、インサイトについてもっとフランクに考えてもいいんだと思えるようになりました。
デコム:ありがとうございます。日常の生活の中で取り組んで頂いていることがすごく嬉しいなと思っているのと、代表の大松の方もよく言っているのですが楽しまないと良いものが出てこないみたいなところを、まさにその形で実践していただいているというのは、本当にすごいなと思いました。
インサイトを構造的に捉える工夫や、アンケートの設問内容の改善を行った
――――印象に残った講義内容はありますでしょうか。
野川:講義内容を学んで今実際によく使っている考え方としては、インサイトの構造化です。シーンやバックグラウンドなどファクト情報から価値を導出するといったところは実践的に取り入れさせていただいております。n=1というワードもすごく印象に残っています。
森本:私はアンケートを少し疑うようになりました。研修の方で取り上げられたマクドナルドさんの例が印象的で人の心理は表面に出てこないこともあるということを知ったので、アンケートを実施する際に、どのようにしたら人の深層心理にまでアプローチすることができるのか考えながらアンケートを作るようになりました。
インサイトスクール受講後、デザイン室でのトレーニングを行い共通言語・理解が進んでいるという手応えを感じている
――――インサイト研修を通じて部門全体がどのように生まれ変わりましたか?
野川:私が一緒に進めているチームでは週に一回インサイトトレーニングをするようになりました。その結果チームのメンバーがインサイトとは何かの共通知識が生まれたと実感しています。またチームの共通理解や言語が生まれたことで、インサイトを起点とした起案や議論も円滑になったと感じています。
――――具体的にデザイン室ではどのようなトレーニングをされているのでしょうか?
野川:実際にインサイトスクール受講した時と似たようなやり方なのですが、デザイン室の中でチームをいくつかに分けて、最近流行っている商品などお題のテーマについて、シーンからバックグラウンドなどインサイトを構造化して考え、グループごとに価値を導き出すという流れでトレーニングを行っています。また導出した価値を、アイフルグループの商品に置き換えた際にどのような価値を提供できるのか、のように段階的なトレーニングも行っています。
自社商品や市場だけではなく、人間を見る視点忘れずに日々の業務でインサイトワークを取り入れていく
――――インサイトスクールで学んだ内容を今後どのような形で活用していく方針でしょうか。
森本:多くの企業が陥りやすい部分ではあると思うのですが、結果を求めにいきすぎるとどうしても自社サービスや市場に目が行きがちになってしまいますので、人間を見る視点を日頃の業務の中から意識して実行していきたいと思っています。
野川:社内で入ってきた案件に対してデザインの起案を立候補するような形で案件を請け負うことがあるのですがそういった時にインサイトを使っていくというところが役立てていけるかなと思っています。デザイン室や他の部署の人たちと人間を視ること、インサイトを起点として議論していければなと思っています。インサイトの探り方というものを皆で統一して捉えていくことが大切になってくると感じているので、デザイン室内で行っているインサイトトレーニングの質も高めていきたいと考えています。
森本:今後の課題かと思うのですが、デザイン室で学んだ内容を横展開していく必要があると感じています。社内全体としてインサイトについて知り、理解していく必要があると思いますが、そのためにはインサイトを学んだことによって得られた結果が必要となってきます。インサイトを捉えることができていればデザイン室としても骨太な企画を生み出していけると思いますので、良い結果を残すことができるということを示して、グループ全体にインサイトを浸透させていければいいかなというふうに思っています。
――――最後に今後のデコムに期待することなどあればお聞かせください。
野川:先日デコム様のお昼のランチウェビナーに参加させていただいて「カスタマージャーニーの作り方」を拝見させて頂きました。その際にカスタマージャーニーというものはその時の参加者にの感覚に影響されるなというふうに感じていたものだったのですが、それをインサイトをベースに各タイミングで考えていくと、お客様の潜在的な欲求を理解した本質的なカスタマージャーニーができるんだなということを理解できました。このウェビナーのように、よりインサイトを実践的に理解、導入する訓練できる場や教えていただける機会を提供していただければいいなと思いました。
森本:インサイトのリサーチ手法などをより深く身につけるようなセミナーがあると非常に嬉しく思います。今、デコム様のインサイトスクールを受講させて頂いてインサイトの初級・出発点に立ったというような形だと思いますので中級編、上級編といったようなより身につくようなものがあれば非常に嬉しく思います。